クールな外科医はママと息子を溺愛したくてたまらない~秘密の出産だったはずですが~



そして、迎えた日曜日。

由岐先生の車で三人でやってきたのは都内にあるパンダで有名な動物園だ。

けれど、その中でも頼はパンダには目もくれず、象の檻の前で目を輝かせていた。



「うきゃー!まんま!おーん!おーん!!」

「うん、ぱおーんだねぇ」



大興奮で象を指さし大きな声で叫ぶ頼に、私は少しでも近くで見せてあげようとその体を抱っこする。



「美浜、俺が代わる」

「え、でも」



由岐先生は私の腕から頼を受け取り、よく見えるようにと肩車をしてくれる。より高い位置から見る象に、頼はいっそうはしゃいだ。



「すみません、ありがとうございます」

「気にするな」



頼とともに象を見上げる由岐先生をつい横目で見つめる。

その姿は、コーチジャケットにグレーのパーカー、黒いパンツといつもよりカジュアルな印象だ。

白衣姿や出勤着より少し若く見えるかも。



でも、どんな格好でもそのスタイルと顔立ちからモデルのように決まって見えるから、つい見惚れてしまうのが悔しい。



「ね、見て。あのパパ超かっこいい」



周囲の人も同じ意見のようで、その声とともにこちらをチラチラと見る視線を感じた。



……それと比べて、私の格好ときたら。

荷物が多いからと大きなリュックを背負って、動きやすさ重視のパンツスタイルにスニーカーと、なんとも色気のない格好だ。



せめてもうちょっとオシャレくらいしてくればよかったかも。

でもひらひらした服やヒールは動きづらいし頼を連れて歩くのには不向きなんだよね……。



でも、けど、と考えていると由岐先生はなにかに気付いたようにこちらへ視線を留める。


  
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