クールな外科医はママと息子を溺愛したくてたまらない~秘密の出産だったはずですが~



すると由岐先生は私の頭をそっと抱き寄せる。

周囲の人の目も気にすることないその行動に、私もされるがまま彼に頭を預けた。



「……前にも言ったけど、俺はそんな大した人間じゃない。俺は――」



顔を上げると、なにかを言いかけた彼は悲しげに顔を歪める。

その表情の意味をたずねようとしたけれど、それを遮るように、由岐先生は私にキスをした。



言葉の続きをはぐらかされている。そう感じながらも、重ねられるこの唇を拒むことはできない。

するとそのとき、私たちの顔の下で寝ていた頼がぱちりと目を覚ます。



「ん……まんまぁ……?」



それに気付くと、由岐先生はゆっくり私から手を離した。



「頼、おはよう。もう一回象さん見に行くか?」

「おーん!みぅー!」



そして起きて早々またはしゃぎだす頼に、私たちは荷物をまとめるとまた象を見に行くことにした。



頼を抱き上げる由岐先生の優しい横顔を見つめながら、この胸には彼の悲しい表情が引っ掛かったまま。





  
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