~狂恋~夫は妻を囲う
「魁聖!!だったら、俺がお前を━━━━━」
「洋武!!!
お前…朝陽会の若頭だからって、調子に乗ってるだろ?
忘れるなよ、この国の本当の裏の王は親父じゃねぇ。
この俺だ!
お前は賢いからわかるよな?
今のお前がどうするべきか……」
魁聖の目が、更に鋭く洋武に刺さる。

「だったら、今日一日だけ待ってくれ!
今日中に堅一をマンションから、出させるから!
マンションにいなきゃいいんだろ?」
すがるような、洋武の目。

「…………わかった」
静かに答え、事務所を出た魁聖だった。

「アニキ、大丈夫?」
「魁のあんな顔、久しぶりに見た…」
魁聖が出ていった後の事務所。
「堅一とは、結構仲よかったんだよ……だからつい、感情的になっちまった……」
洋武が呟く。

「洋、ソイツと話できる?」
「俺等が話してこようか?マンションから出るように話せばいいんでしょ?」
右京と左依が気をつかって洋武に話しかける。

「いや、俺が行く」

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「久しぶりだな、洋武」
「あぁ…悪いな、急に……」
「ううん。あ、彩羽に会ったんだ!
引っ越し先の隣に住んでてさぁ。
まぁ…結婚してたみたいで、凹んでんだけど……」
その日の昼。
洋武は堅一と、堅一の勤めている近くのカフェにいた。

「その彩羽のことなんだけど……」
「彩羽?」
「あのマンションから出ていってほしい。
もちろん、俺が責任をもって引っ越し先を世話するから!」
「は?どうゆうこと?」
「理由は……言えない……
聞かないでくれ……とにかくお前の為なんだ!」

洋武のあまりの辛そうな表情。
堅一は何とも言えない気持ちで見ていた。
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