~狂恋~夫は妻を囲う
「私としてはただ、魁聖の癒しになればって思っただけだったの……
魁聖は、ある意味……人間じゃないから……」
「聖子…?」
「魁聖ほど、冷酷な人間はいないわ……」
「え?」
「ううん、何でもない……
…………彩羽、魁聖のこと好き?」
「え?もちろん!」
「気をつかわなくていいわよ?
魁聖にチクったりしないから!
魁聖、かなり束縛激しいでしょ?」
「うーん。それはそうだけど、魁聖だけなの」
「ん?」
「背中の傷……綺麗だって言ってくれたの。
それまで、みんな退いていったから。
確かに厳しいなって思ってるけど、私にはもう…魁聖しかいないから……」
「そうね……」

そうなったのは、魁聖のせいなのよ……
と、言えたらどんなに楽だろう。
でも言えるわけがない。
その言葉は、みんなを地獄に落とす悪魔の囁きなのだから━━━━━━

「いろちゃん、お待たせ~」
「うん」
「行こうか?」
魁聖が仕事が終わるまで聖子とカフェで話し、仕事終わりに魁聖が迎えに来る。
「聖子、またね!今日はありがとう!」
「うん…じゃあまた…」

「魁聖、お買い物して帰りたいんだけど……」
「うん!わかった~」
食材等をカゴに詰めていく。
「今日は何食べたい?」
「うーん。暑いし、冷たいものがいいなぁ」
「じゃあ、冷やし中華とか、冷しゃぶ?」
「おっいいね~!肉がいい~!」
「じゃあ…冷しゃぶだ!」
買って外に出る。

指を絡めあって繋ぎ、ゆっくり歩いて帰る。
「魁聖」
「ん?なぁに?」
「私も荷物持つよ!」

「いろちゃんは、俺と手を繋ぐだけ!
それしか、許されないの!」
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