~狂恋~夫は妻を囲う
「え?朝陽様、やめて下さい!」
「無理だ…お前が魁聖を怒らせたんだから」
「ただ、奥様に会っただけです!」

「お前…彩羽に会ったの?」

「え?えぇ。魁聖さんの奥様を見てみたくて……」
「裏のルール知らねぇのかよ……!?」
洋武も驚きを隠せず呟いた。

「コイツもバカでしょ?」
魁聖が何本目かの煙草を咥え、ため息と一緒に煙を吹く。

「裏のルール知らないママっているんだ!」
「確かに、バカだ…」
左右も声を揃えて、理恵を見下ろした。

「あの…何なんですか?
裏のルールって………」
「朝陽 魁聖の怒りを買ってはいけないってルールがある」
「それは知ってます」
「だったら、なんで彩羽に会ったんだよ!?」
「え?だから、それは━━━━━━」
「魁聖くんは、彩羽ちゃんのこと狂うくらいに愛してるんだよ!」
「彩羽は、魁の宝物」

「それだけ言えば、わかるよな?」
洋武が理恵を見据え言った。
「だから、会っただけです。確かに嫉妬して酷いことは言いましたが……」
「会ったことが問題だ。
右京が言ったじゃん!彩羽は魁聖の宝物だって。
宝物を知らないところで勝手に取られて、挙げ句傷つけられて怒らないヤツいるの?
特に魁聖は、彩羽に関して敏感だからな。
もうそれだけで“死”を意味するんだよ!
聖子でさえも、事前に魁聖の許可が必要なんだぞ!」

「行こ?ママ」
左依が声をかけた。
「早くして。これ以上ここにいても、魁を怒らせるだけ」
右京も静かに催促する。
でもなかなか動こうとしない、理恵。

「理恵」
「はい!」
「知ってる?このマドラー一本でも、人って殺せるんだよ……!?」
スッとマドラーを取り、理恵に向けた魁聖。
その表情は、まさに“死神”だ。
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