~狂恋~夫は妻を囲う
洋武の事務所に行く途中の車内。
洋武が天井を見上げ、苦しそうに目を瞑っていた。

「でも、決めたのは彩羽ちゃんだろ?」
左依が運転しながら、バックミラー越しに言った。
「そうだな。
決めたと言うより、決めさせられたが正しい」
「…………そうだけど…」
「彩羽には…魁しかいないから……」
またボソッと右京が言う。

「そうさせたのは、他でもなく魁聖だ。
彩羽は、そんな残酷な事実……夢にも思ってないだろうな……」

両親の死亡や友人が離れていったこと、リストラ……
全て、魁聖の仕業だと━━━━━
そしてそれをしたのは、洋武達なのだ。

裏で彩羽の両親を事故に見せかけて殺し、友人達に離れるように脅し、リストラも会社を脅したのだ。

洋武が事務所に着くと聖子がいた。
「おはよ」
「来てたの?」
「うん、さっきまでずーっと飲んでてここが近かったから、シャワー浴びにね!」
「そりゃ、お疲れさん!」
「そうゆう洋武こそ、お疲れみたいね」
洋武は今日の事や、彩羽のことを話す。

「それに関しては、散々話したわよ!
私だって、彩羽のこと大切な親友なんだからあんな残酷なこと止めてって!
…………でもあの魁聖が聞く耳もつわけないでしょ?
あんまり言ってると、私達が殺されるわよ!
魁聖は……彩羽以外は、本当に興味ないんだから。
何の躊躇もなく殺るわよ、あの子」
「あぁ…そうだな」
「……………
辛いわね…片思い……」
「は!?」

「彩羽のことまだ好きなんでしょ?」
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