初恋は星になる

蒼太の優しさは、彼の命が消えても続いている。


「今度、蒼太の分も、新しい種を蒔いて育ててみるか」

「いいね。何の花だったら喜ぶかな」


彼の提案に、私は泣き笑いで応える。


「さやかが植えた花なら、何だって喜ぶだろ、きっと」


しばらく、私たちは名残惜しげに星空を眺め、流れ星を待っていた。



「……ほら、もう行くぞ。明日、早起きして水やりするんだろ」

「……うん」


私の方へ手を差し出した陽介は、ハッとしたように星空を仰いだ。

こちらに伸ばしかけていたその手を、無造作に制服のポケットへ収めてしまう。

気づかないふりをした私も、彼につられて、夜空に浮かぶ星をさがした。




──繋がれない二つの手。


芽生えかけた想いはすでに、土へ還っているはずだ。


いつか芽が出て、蒼太の花が咲いたとしても。

これから先も、陽介と結ばれることはないのだろう。



だけど、私たち三人の絆が消えることはない。

あの罪を心に刻んだまま、歩いていく。


蒼太の好きだった星や花を、目に焼きつけながら。





< 3 / 3 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:0

この作品の感想を3つまで選択できます。

この作家の他の作品

密会は婚約指輪を外したあとで

総文字数/107,698

恋愛(純愛)253ページ

表紙を見る
雪色の囁き ~淡雪よりも冷たいキス~

総文字数/39,402

恋愛(その他)84ページ

表紙を見る
BLACK TRAP ~あの月に誓った日~

総文字数/65,893

恋愛(キケン・ダーク)145ページ

表紙を見る

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop