あなたとしゃぼん玉
母親と向き合う努力をしたわたしは、再び、母親の言葉で傷つくことになる。

11月、母親の誕生日があった。
わたしの家庭は昔からわたしたち兄弟の誕生日はお祝いしてくれていたが、両親2人の誕生日をお祝いしているところを見たことがなかった。
ケーキやプレゼントすらもない。
それがおかしいことに気づいたのは中学生のとき。
友達が今日はお母さんの誕生日だからと誕生日プレゼントを買っているところに付き添い、これが普通なんだと理解する。
ほぼ24年間、プレゼントなんてあげたことがなかった。
家族で母親や父親にプレゼントを渡しているところを見たことが無かったから。
だからやり直そうと決意したこの時、わたしは最近スマホの充電の減りが速いと悩んでいた母親にiPhoneを購入し、プレゼントした。
たしかに値段は高かったが、24年間何もしてこなかったわたしにとって、その価格は相応だと思ったし、足りないとさえ思えた。
母親は困惑しながらも「ありがとう」が言えた。
その数日後、ご飯に誘ったわたしと母親は食事の当日にトラブルを起こす。


♪〜♪〜♪


【母親:今日ごはんどこ行く?】
[わたし:近所のハンバーグ屋さんは?]
【母親:そこにしようか】
[わたし:うん!じゃまた後で]
その数秒後に母親からまた連絡が入る。
【母親:奢ってくれようと思ってるんなら、行かへんから】

なぜ。
あなたはその言葉を打ってしまったのか。
出さずにはいられなかったのか。
相手の目線や気持ちになれないのか。
伝え方を考えられないのか。
わたしは疑問しか生まれなかった。

前もプレゼントもらったよ、すごく高価な物だって分かってるから、大事にするね。今日のご飯も出してくれるつもりやったら、申し訳ないからお母さんも出すよ!ごはん楽しみにしてるね。

わたしがお母さんの立場だったらそう伝えると思う。
母親は何かが欠落してるんだと思う。
もうそうとしか思えない。
わたしたちが寄り添えないのは、母親が寄り添う気が無いからだったんだと気づく。
[わたし:なんでそんな言い方しかできひんの?]
悲しい。
しんどい。
[わたし:じゃあ、今日は無しで]

ぶち壊したのはわたし?
母親?

ただ、許せなかった。
糸も簡単に言ってしまうその神経が。
精神が。
どうして、このひとがわたしのお母さんなんやろう。
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