LOVEREVENGE~エリート弁護士と黒い契約結婚~
「それと、小林。
俺が今日会うのは、マリトイトイの社長じゃなくて、弟で副社長の山本礼二(やまもとれいじ)の方だ。
だから、そうお前には頼んだはずだが」


そう言われ、え、嘘、と自分の記憶を遡る。


今日の朝一、内線で川邊専務から私にその指示があった。


社長と副社長を聞き間違えた…。


いや、それ以前に。


私は胸ポケットから、小さな手帳を取り出した。


そこには、今日川邊専務が会談するのは、副社長だと私の字でしっかりと記されている。



「すぐに、副社長の山本礼二氏の経歴をまとめて来ます」



「いや。いい。
お前なっかなか来ねぇから、待ってる間、ネットで見たから。大体分かった」


「そうですか…」


この人、意外にそうやって嫌味とか言う人なんだ。



「私生活で何があんのかは知らねぇけど、
仕事に迄支障をきたすな」


「はい。
申し訳ありませんでした」


浮わついて仕事をしていた自分を恥じてしまう。


川邊専務に頭を下げるけど、
顔を上げてから、まともにもうこの人の顔が見られなかった。


忘れた訳じゃないけど、この人の方が私以上に、私とこうやって仕事をする事に抵抗があるのに。


この人は、それなのに仕事上変わらず私に接してくれている。


もうこれ以上、この人に関わる事が、苦しい。
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