私は1人じゃない



「なんだ」
「その低い声どうした、機嫌悪いのか?」



「お前が電話をかけてくるから機嫌が悪いんだよ」
「相変わらずだな、元気か?」


「元気じゃないって言えば心配してくれるのかよ」
「そりゃ俺の弟だから心配するさ」


「よく言うな、俺を弟とか思ったこと1度もないだろ」
「本当だ、蓮は信じないだろうけどな」


「あぁ、信じない」
「まぁいいけど、アメリカに来ないか?」


「………は??」


俺を悪者にして家族の仲を引き裂いたのはあいつのくせに。



俺が孤独を感じたのは紛れもなくあいつのせいなのに今更後悔を感じて復縁させようってか、


ふざけんな。


「親父がお前を呼んでる」
「行くわけない」


「会社を継いで欲しいんだよ」
「それは蒼の役目だろ」


「でもな俺だけでは力が足りないんだ、お前の力が必要になってくるんだよ」
「邪魔だと思ったら俺を捨てて、蒼の役に立つと思ったら、俺を利用するってか、相変わらずクズだな」


「お兄ちゃんにそんなこと言うなよ」
「俺は蒼を兄だとは思わないからな」



ムカついて電話を切った。


水樹 蒼(そう)、7歳上の兄。


小さい頃は面倒を見てくれて優しい兄だと思っていた。


でもそんなのは俺の勘違いで、俺は家族から、裏切られた。


その傷が癒えることはないーー………。

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