私は1人じゃない



足音を立てないように勇斗さんの部屋……901号室に向かう。


「じゃあね」
「あぁ…」


勇斗さんの部屋から梨沙子先生が出て来た。


なんで……?


先生同士で話してたのかな。


梨沙子先生が廊下を曲がるのを確認してから勇斗さんの部屋のインターホンを押す。



「はーい…………き、霧野さん」


今、勇斗さんモードだったのに無理矢理先生モードにした。


「……来ちゃった」
「まず入って」


「何で来たの?」
「寝れなくて」



「でも、何も言わずに俺の部屋に来たらだめだよバレたらどうするの」
「誰もいなかったから大丈夫」



私、いつの間にか行動が大胆になってる。


最初はバレたらどうしようって学校行くのも怖かったのに、今は根拠はないけどバレないような気がして勇斗さんに会いたいと思ったらすぐに足が動いちゃっている。



これも勇斗さんのおかげ。


恋のパワーのおかげ。


恐ろしい、恋のパワー。


「そう言えば、梨沙子先生見たけど、先生と梨沙子先生仲良いの?」
「え?あー、そうだな、明日のこととか少し喋ってたんだ」



「そうなんだ」
「部屋ですること何もないよ?」


「うーん、…………」


さすがに行動は大胆になっても、自分の気持ちを素直にはまだ言えない。


恥ずかしい恥ずかしい。


「…………テレビでも見ようかな」
「いいよ、一緒に見ようか」



夜中には面白い芸人さんのコントとかやってて、すごく面白い。


「アハハハッ!」
「杏衣ちゃん、声大きい隣に聞こえるよ」


勇斗さんのゴツゴツした細くて大きな手で私の口が塞がれた。


勇斗さんはすぐに離れてくれて息苦しくはならなかった。


「ごめん、気をつける」
「……俺こそごめん」


「勇斗さん、手大きいんだね」
「そりゃ杏衣ちゃんよりは大きいよ」


手の血管が見えて爪も綺麗に切ってて揃えられている。


勇斗さんは自分の右手と私の右手を合わせて、


「杏衣ちゃんの手小さい」
「勇斗さんより大きいわけない」


「杏衣ちゃんの手白くて綺麗だね」


そのまま勇斗さんは自分の指に私の指を絡ませた。



これは恋人繋ぎ。


「勇斗さん………?」
「………俺がしたいから」


テレビでは、「漫才界一の駆け引きコンビの新ネタ!!見逃せない!!」


なんて司会の人が言っているけどそれどころじゃない。


手から心拍音が聞こえるんじゃないかってくらいに手が震えてる気がする。


自分から勇斗さんを抱きしめたのに手を握られるのは慣れてないなんておかしいよね私。


「杏衣ちゃんの手汗かいてる」
「え………!!ごめん、離していいよ」


「大丈夫、このままがいい」


汗かいてる手を握りたいわけがない。


「ねー、恥ずかしい」
「緊張してるんだね、こっちおいで」


握ってる手をそのまま引っ張って、私の頭が勇斗さんの肩に乗っかった。


「わっ!!」


同じベッドの上で………ハグ。


もう顔が沸騰しそう。


過呼吸になりそうなのを目を瞑って1回深呼吸して、はい解決。


「杏衣ちゃんの髪サラサラだね」


髪を指に絡ませてサラーっとする勇斗さん。


髪にまで熱が出てしまいそう。


勇斗さんが触るところに全てに反応して肩がピクッとなる。
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