私は1人じゃない



「エアコン涼しい〜〜」
「やっと来たね、杏衣ちゃん!」


学校には来たけど、私が行く場所は教室ではない、保健室。


クラスメイトからいじめられてるとかそういうことはない。


ただママからいじめられていて心を病んでしまっていた時に、保健教諭の真壁 梨沙子先生が全て話を聞いてくれて、ママには保健室に行ったこともなにも言わないと担任の木原 琴美先生も約束してくれて、基本は授業を受けるけどしんどい時は保健室に来ている。



「勉強はサボらないように」と言われているしママからも成績はずっと監視状態でいたから成績は上位をキープしている。


「学校久しぶりだよね、今まで何かあった?お母さんとのことでも」


私は真壁先生に家を出たこと、知り合いの家に泊まっていることを話した。


「そう、やっと解放されたのね」
「……ありがとう」


真壁先生は私を否定しない。


「そうだね」「いいと思う」と肯定しかしない。


周りの人には恵まれているなぁと今更ながらに気付く。


「杏衣!会いたかった〜〜!」


保健室のドアを勢いよく開けて抱きついてきた朱莉。


「いたーい」
「ずっと連絡しない杏衣が悪い!」


「ごめんね〜」
「ずっと連絡なくて杏衣の家に行こうかどうか迷ったんだよ、本当に心配したんだから」



「ごめんごめん、もう大丈夫だから」
「杏衣とたくさん遊ぶからね!!約束だよ」


「分かった」
「でも、今日は桜介となんだよね、また近いうちにね!」


「ずっと柊木とイチャイチャしてて」
「うるさいなー、もう行くね」



柊木 桜介、朱莉の彼氏。


あまり男に媚びない朱莉だけど、その朱莉をゾッコンにした桜介。


「ずっと言い寄ってくるから仕方がなく付き合った」とか言ってるけど、実際はどんなに女子に言い寄られても朱莉だけを見てくれた桜介にノックアウトされて付き合っている。



どんなにサバサバしても桜介の前では乙女が出る。


「私も誰かに甘えられたなぁ〜」


桜介と遊ぶと言っていた朱莉のにやけた顔と背中を見て思う。


誰かに助けてとか体ごと誰かに預けていたらここまで傷付かずに来れたのかな。



でも何されても何かを言われても血は争えない。


ママの娘であることは事実だから警察にも連絡しないでここまで頑張ってきた。


楽ではなかったけどそうするしかなかったから後悔はしてもしょうがない。


「甘えるって勇気いるけど、その1歩を踏み出したら、意外とお気楽に生きれるかもしれないね」
「真壁先生、彼氏いるの?」


「いないよ、前付き合ってた彼氏のことまだ忘れられなくてね、、未練がましいったらありゃしない」
「そうなんだ」


「……私が悪いのよ、自業自得」


真壁先生は大きく息を吐き出して、コーヒーを飲み干す。


「杏衣ちゃんも甘えられる人を見つければ傷心も癒やされるかもね」



そんなことできるかな、出来たらいいなと思いつつ、甘え方を知らないし出来ないかもなぁ。



結局私は1人だから。


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