私は1人じゃない



悪い思い出しかないチーズケーキ。


でも2人と食べるチーズケーキは美味しくて、


美味しいと言ってくれる人と食べるチーズケーキはチーズの味が喉をスッと通って、この時間が嬉しくて楽しいのに、


でも、ママから1回でも、1回だけでいいから美味しいって言って笑って欲しかったなあって思ってしまう。


私は欲張りでわがまま。


ごめん、ごめんなさい…


「杏衣、どうした?」
「え……」


気付いたら涙が出ている。


「杏衣ちゃん?」
「ほ、本当に美味しいなぁと思って、、、」


上手く声が出ない。


涙声になって泣いてるのがバレているけどなんとかごまかす。


「久しぶりに作って美味しいなぁと思った、それだけだから気にしないで…」
「本当美味しいよ杏衣、ありがとう!」


朱莉がなんとかその場を明るくしてくれた。


勇斗さんは心配な目で私を見ている。


今が楽しくて過去を忘れられるような時間を過ごせているのに、


この時間を台無しにしてしまってごめん………。


今が幸せだからこそ、楽しいからこそ対比する過去が鮮明に蘇ってくる。



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