8月25日(前編)
「いいよ、全然待ってるから」

そう言って笑う朝陽。

待たないでほしい。

待たれたほうが困る。


「本当に帰りは無理、なの」

「…そっか、わかった」

っふぅ…よかった。


と安心した時、わたしたちの横を素通りしていく水樹くんの背中が。


おはよう、水樹くん。

と心の中で言葉をかける。


だけど、水樹くんは足を早めて先に行ってしまった。

「おばさんにもお礼伝えといて?紗良もありがとな」


下駄箱に着くとそう言い残して、朝陽は背中を向けた。
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