8月25日(前編)

4月

4月7日…

わたしの恋…


初恋は全てこの日から始まった。

「待って待って、これ落としたよ」

少し離れたところから聞こえた声に、わたしの足は止まることを知らない。


「え、ちょっと君…えっと…夏目紗良っ」

ーー夏目紗良[なつめさら]

わたしの名前を呼ばれて初めて足を止めた。


少しすると名前を呼んだであろう人が目の前に立って顔を覗きこんできた。

「あ……」

目が合うと少し間抜けな声を漏らしたその人は、わたしから視線を外して曲げた背中を伸ばす。


親以外の人間とこうして目が合ったのは久しぶりかもしれない。
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