【完結】わたしたち、離婚を前提の期間限定夫婦になります。


「紅音、行ってくる」

「行ってらっしゃい」

 朝いつも通りに爽太さんを見送ったわたしは、家事を済ませてから仕事へと向かう。
 そして夕方になったら帰宅して、夫のために夕飯を作る。
 
 毎日夫婦で一緒に夕飯を食べることは日課で、残業で必ず帰りが遅い時も、爽太さんは帰ってからちゃんと夕飯を食べてくれる。
 今は家賃4万5千円ほどで住んでいたボロアパートに比べるとだいぶ裕福な生活だ。キッチンも広くて、冷蔵庫も大きくて、お風呂もとても広くて……。しかもお風呂なんか、ジャグジー付き。

 借金を抱えて生きてきたわたしにとっては、裕福すぎるくらい贅沢な生活だった。毎日美味しいものを食べることが出来て、そして暖かいお風呂に入ることが出来る。
 夫婦で寝るベッドなんかキングサイズでとても大きくて、夫婦二人寝るのには広すぎるくらいに感じる。

 だけどその反面、わたしなんか今まで貧乏な生活をしてきたから、こんな裕福な家庭で育ってきた人たちが羨ましくも感じた。
 うちは貧乏だったから、家族みんなでご飯を食べるのもやっとだったのだ。学費なんてものも払えないから、学校も辞めた。
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