【完結】わたしたち、離婚を前提の期間限定夫婦になります。


 確かに今、俺はウィーンに行くか行かないか、迷っていた。
 紅音に子供が出来た以上、日本を離れる訳にはいかないとさえ思った。日本を離れて紅音を一人にしてしまったら、誰が紅音を守ると言うんだ……って。
 ましてや子供が産まれれば、紅音は子育てで忙しくなるし、そんな時に一人になってしまったら……。何かが起こったら、紅音は確実に不安になるに違いない。

 産むことももちろん大事だけど、産まれた後のことも考えていくと、やっぱり紅音を一人には出来ない……。
 紅音を守っていけるのは、俺だけだっていうのに……。俺はあの子の父親になるのに、何も出来なくなる。
 そんなのはやっぱり、俺はイヤだ。

「……親父、やっぱり俺ーーー」

「決めるのはお前たちだ。……好きにしろ」

 親父はそれだけ言うと、コーヒーのマグカップに口を付けた。

「親父、俺は間違ってると思うか?」

「……さぁな」

 分からない。間違ってのかもしれないし、そうじゃないかもしれない。
 だけどその答えなんて、俺には分からない……。

「答えは一つじゃない。……だけど人生の選択肢なんて、限られている」
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