【完結】わたしたち、離婚を前提の期間限定夫婦になります。


 少しの沈黙の後、爽太さんはゆったりと言葉を発した。

「悪い。……そろそろ、行かないと」

「はい」

 名残惜しい。離れたくなんてない。……行かないでほしい。
 色んな思いが交錯してしてしまう。

「紅音、体に気をつけてな」

「……爽太さんも、気をつけてください。決して無理は、しないでください」

「分かってるよ」
 
 爽太さんは優しく頭を撫でると、微笑みを浮かべた。

「……愛してるよ、紅音」

「わたしも……」

 そして最後にわたしたちは、目を閉じてそっと唇を重ね合った。

「じゃあ、行ってくる」

「……行ってらっしゃい!」

 爽太さんは名残惜しそうな表情をしていた。
 だけどわたしは、爽太さんにも笑顔で行ってほしいから、とびっきりの笑顔で爽太さんに向かって両手を振った。
 爽太さんはキャリーケースを右手に持ち、左手で手を振り返してくれた。

「頑張って、爽太さん……」

 爽太さんの背中が見えなくなるまで、わたしは爽太さんを見送った。

「……わたしも、頑張るからね」

 お腹の赤ちゃんにそう決意をし、わたしはそのままゆっくりと空港を後にした。
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