天敵御曹司は純真秘書に独占欲を刻み込む~一夜からはじまる契約結婚~
息を切らしてその扉を眺めていた私だったが、我に返ると急いで支度を始めた。
朝食などもちろん食べる暇などなくて、急いで玄関を出て高級マンションのエントランスを抜けると、そこにはドイツ製のSUVが止まっていて助手席の窓が開く。

「佐知、乗れ! 遅刻よりマシだろ?」
イジワルそうに言われたその言葉だが、背に腹には変えられない。
悔しくて仕方ないが、助手席に乗り込むとあまり表情は変わっていないが、龍一郎さんが楽しんでいるのがわかる。

「今楽しいですよね?」

「ああ」
何の躊躇もなく答えられるその言葉に、もはや何も言えなくて小さくため息を付くと、私は窓の外に視線を向けた。

あの後、私はあっさりと引越しをさせられた。龍一郎さんのマンションは、想像以上に大きく、私のワンルームがすっぽり入るぐらいの広さのゲストルームもあった。

そんなこんなで一緒に住み始めて数週間が経過しようとしている。
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