天敵御曹司は純真秘書に独占欲を刻み込む~一夜からはじまる契約結婚~

仕事になれば全くといっていい程変わらない様子の龍一郎さんに、本当に結婚したのかと疑いたくなってしまう。 名字にしても龍一郎さんから旧姓でいいと言われているので、特になにも変化もない。
そんなことを思っていると、書類が頭の上に乗せられる。

「何をぼんやりしている。仕事しろ」

冷たく言い放たれ私は慌ててパソコンに視線を戻す。本当に彼は解らないことばかりだ。

疲れを感じふと時計に視線を向ければ、意外にも仕事に集中していたようで定時を過ぎていた。
しかしまだ仕事が終わらず、小さく息を吐きながらチラリと龍一郎さんに目を向ければ、なぜかバシッと視線が合ってしまい、ドギマギしてしまう。

「若林、もう上がれ」

だいたいこの数週間一緒に仕事を終えていた私は、龍一郎さんの声に聞き返す。

「いえ、まだこの続きが……それに部長もまだ仕事残ってますよね?」
問いかけた私だったが視線を外さず何も言わない彼に、どうしたのかと思い言葉を待っていると以外なセリフを口にした。

「少し顔色が悪い。先に帰ってろ。それは明日でいい」
まさか心配をしてくれていたとは思わず、私は目をぱちくりさせてしまう。
驚いたのが分かったのか、少しだけ龍一郎さんが罰の悪そうな顔をした。

前より感情が見えるようになってきた気がして、私は嬉しさと、少し困る龍一郎さんが見たくてニコリと微笑む。

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