天敵御曹司は純真秘書に独占欲を刻み込む~一夜からはじまる契約結婚~
幸せと不安
朝か……。

少しだけ差し込んだ光の明るさと、たくさんの夢を見た気がして寝すぎたような気がする。
そう思いながら時計を見れば、まだ七時を回ったところだった。

寝ころんだまま天井を見つめて、今日までのことを思い出す。
特に何の変化もないまま、私たちは(仮)の夫婦生活を送っていた。
穏やかで少しずつだが、会社以外の彼を見て距離が近づいたのは事実だと思う。
もしもこのまま、私だけがこの人を好きになってしまったらどうなるのだろう? 
一方通行の想いは苦しくなるに決まっている。小さくため息をつくと私はゆっくりと起き上がった。
今日は土曜日。カーテンを開ければ春の日差しがとても温かかく、出かけるには最適の日のように思えた。

最近の龍一郎さんは、個人の仕事もあるようで、土曜日は一人で過ごすことも多い。
読書が趣味の私としては、ゆっくりと過ごせる日なのだが、もったいないぐらいの天気だ。
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