なぜ婚約者なのか説明書の提出を求む

玲於奈の気持ち

 茉帆の部屋にある僕が選んだベッドで初めて二人で眠った。

 熱のある茉帆を一人にしておけなくて……。

 と言うのは言い訳だろうか?

 このマンションで一緒に生活をするようになって、一か月半を過ぎたのか?

 

 今年に入って先端医療機器メーカー国内シェアトップの和泉製作所との業務提携の話が、今枝製薬の社長である父と和泉社長との二人の話し合いで進んでいた。

 まるで旧知の友人のように話をする中、僕と茉帆にお見合いをさせてみようという話になったらしい。

 業務提携だけでなく両家の繋がりを強固にする為とかじゃなくて、偶々年頃の息子、娘の話になって、縁があればという気楽な話だったようだ。



 五月の初めにいわゆるお見合い写真とつり書きが渡された。

「来月くらいにお見合いの席を設ける予定だ。無理にとは言わない」
父に言われた。


 お見合いか……。
 それまで全く興味もなかった。

 いつか、親の薦める誰かと結婚するんだろうと漠然と考えてはいたが……。



 その僕の考えは、このお見合い写真一枚で見事に覆された。

 茉帆の写真を見た時、何て言えば良いんだろう?
 
 ピンと来たとか、そんな生易しいレベルでは無く……。

 もうこれこそが運命なのだと感じたのだ。
 この僕が……。

 育ちの良さが一目で見て取れる上品な微笑み。
 美人ではあるが冷たい雰囲気は全く感じさせない可愛げのある顔立ち。
 背は高くスタイルも文句のつけようがない。
 
 何より名古屋の実家に居れば、お嬢様として習い事でもしていれば良いだろうに東京で一人暮らしをして美容師として働いていると言う。

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