なぜ婚約者なのか説明書の提出を求む
両親と食事会

はあ? お見合い?

 日曜日はあっという間に来た。

 インペリアルホテルまでタクシーで乗り付ける。

 ネイビーのタフタの膝丈のドレスを着た。ハイヒールに小さなクラッチバッグ。アクセサリーはパール。これで文句はないでしょ。

 フランス料理のラファエルは七階。
 エレベーターで上がって行く。

 金髪の背の高いカップルと乗り合わせた。

 英語? じゃないな。フランス語みたい。
 会話の意味は分からないけど上品な笑顔でのやりとりがまるでフランス映画を観てるみたいでウットリする。

 私も167cmあるのに。しかもハイヒール。
 
 それでも見上げる紳士淑女。なんて素敵なんだろう。

 七階に着いて、そのカップルも降りた。
 行く先は同じみたい。

 ラファエルで
「和泉ですけど」

「はい。お待ちしておりました。ご案内致します」
 個室に案内された。
「ありがとうございます」

 部屋に入ると……。

 えっ? 部屋が広過ぎませんか?

「茉帆。あなたはここね」

「あ、うん」
父と母と私だけなら、こんなに広いテーブルは必要ない。

「誰か来るの?」

「えぇ。素敵な殿方がね」

「はっ? どういう意味?」

「茉帆のお見合い相手の方とご両親よ」

「はぁ? 聴いてないわよ」

「言ったら、あなた来ないでしょ?」

「帰る」

「会うだけよ。それくらいしてちょうだい。茉帆には好き勝手させてるのよ」

 それを言われると反論出来ない……。
 でもお見合いって……。

「茉帆、嫌ならお断りしても構わない。ただ会うだけ会って欲しい」
父に言われると……。

「分かった」

「暫く会わない間にまた綺麗になったな」

「お父さん。私にお世辞言っても無駄ですからね」
父は笑っていた。温和と言うか何と言うか……。


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