なぜ婚約者なのか説明書の提出を求む

年末年始

 慌ただしい年末。玲於奈さんは仕事が忙しく帰宅が遅い日もある。

 田沢さんの作ってくれる美味しい食事も一人で食べる日があったりする。
 寂しいけれど仕事なのだからしょうがない。

 無事合格すれば四月からは一人で食事するのが当たり前になるのだろう。

 私は最後の追い込みの受験勉強の日々を過ごしている。

 新年を迎えて直ぐに入試が待っている。

 玲於奈さんと四年間も離れ離れになるくらいなら、いっそ落ちた方が……。
 そんな短絡的な逃げ道を考えたりもする。

 自分でも情けないと思うけれども正直な気持ちを言えば、ずっと玲於奈さんと一緒に居たい。

 あんなに応援してくれているのに……。
 私が言い出した我儘を許してくれたのに……。

 玲於奈さんは私に期待してくれている。
 和泉製作所の行く末も心配してくれている。

 なのに逃げ出したいなんて考えるのは私が弱いから。自分に自信が持てないから……。

 今迄、こんなに狭き門とも言うべき受験を経験して来なかったから弱音を吐いてしまうんだろう。

 名古屋の私立名門女子校も東京の美容短大も入試は勿論あったけれども、それ程の競争率ではなかったから。

 初めてとも言うべき受験に怖気付いているのは否めない。

 そんな時間さえ既にない今頃になって何を考えているんだろう。私の単なる我儘だ。

 やれるだけの事は全てやり切って受験しよう。やっと心が決まった。
 
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