なぜ婚約者なのか説明書の提出を求む

茉帆の誕生日

 合格発表まで、あと五日。

 きょうは私の二十六歳の誕生日。
 二十五歳を過ぎると誕生日も思いは複雑だ。
 素敵に歳を重ねて行きたいと思うけれど現実は中々難しいと実感する。

 玲於奈さんと婚約しているのに、もしも合格したら四年間も離れ離れになる。

 頭の中では理解しているのに、玲於奈さんの傍を離れたくない気持ちは日増しに大きくなって私を悩ます。

 遠距離恋愛になるのかな。
 それは世間一般的に上手くいかなくて別れるケースが多いと聴く。

 私たちは大丈夫と思っていても何が周りで起きて、どんな結末を迎えるのかは誰にも分からないんだろう。

 玲於奈さんは誠実な人だと思う。
 私の気持ちも変わらないと自信を持って言える。

 それでも不安になるのは、どうしようもない。

 世の中の全ての恋人たちが愛し合って幸せになれれば良いのに……。
 そんな事を考えていたら玲於奈さんが帰って来た。

「おかえりなさい」

「ただいま。茉帆、きょうは誕生日なんだろう?」

「えっ? 知ってたんですか?」

「ごめんな。きょうはどうしても抜けられない接待で遅くなった」

「お仕事ですから。気にしないでくださいね。誕生日が嬉しい歳でもないですから」

「それは駄目だよ。次の日曜日に出掛けないか?」

「何処へですか?」

「茉帆の行きたい所だよ」

「うーん。行きたい所ですか?」

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