なぜ婚約者なのか説明書の提出を求む

合格発表

 試験から十日後が合格発表。

 大学のホームページに合格者の受験番号が掲載される。
 午前十時。
 時間前にパソコンで開いていたページを見る。
 社会人枠の合格者番号を探す。

「あ、あった……」
私の受験番号の174番が……。

 直ぐに玲於奈さんに電話を入れる。
 きょうは午前中は専務室に居るからと言われていた。

「もしもし。茉帆か?」

「はい。合格してました」
その後は言葉にならない。

「おめでとう。茉帆。良かったな」

「玲於奈さんのお陰です……」

「違うよ。茉帆が頑張ったから合格を勝ち取れたんだ」

「本当にありがとう」
正直、合格するとは思っていなかった。

「早く名古屋のご両親に報告するんだよ」
玲於奈さんの声が胸に温かく響いた。

母の携帯に掛けた。ワンコールで母の声。 
「茉帆。どうだったの」

「合格してました」

「そう……。おめでとう。頑張ったね……」
母は電話口で泣いているようだ。

「お父さんも朝からずっと待ってたのよ。教えてあげて」

電話口に父が出た。
「茉帆か?」

「はい。合格しました……」

「そうか。そうか……。茉帆、凄いぞ」
父まで涙声になっている。
「大学の近くにマンションを探しておいた。新築のセキュリティ万全な所だ」

「お父さん。気が早いよ」
でも嬉しいよ。お父さんの気持ちが。

「次の日曜日にでも見に行くか?」

「そうだね。色々ありがとう。お世話になります」

「大事な一人娘が危ない所に住むなんて許せないからな」

「うん……」

「玲於奈さんにくれぐれも宜しく伝えてくれ」

「はい。お父さん、ありがとう」

「ああ。じゃあ切るぞ」

「うん」



 日曜日。両親と京都へマンションを見に出掛けた。

 周りの環境も悪くないし、陽当りも良くワンルームだけれど思ったより広く感じる。作り付けのクローゼットも充分で、キッチンもバスルームも使いやすそうだ。

 そのまま契約を済ませ夕食はホテルの有名な京料理のお店で合格を祝って貰った。

< 139 / 188 >

この作品をシェア

pagetop