なぜ婚約者なのか説明書の提出を求む
大学生活

勉強の日々

 只々ひたすら勉強して一年が経った。

 医用工学の教授にある日、声を掛けられた。

「和泉茉帆さんだね?」

「はい。添島教授」

「もしかして君は名古屋の和泉製作所の和泉総一朗さんの……」

「えっ? 父をご存知なんですか?」

「やっぱりそうか。君のお父さんとは大学の同期なんだよ」

「そうなんですか。知りませんでした」

「七、八年前に大学の同窓会があって久しぶりに会ったんだよ」

「そうだったんですか」

「確かあの時は美容短大に行っている一人娘さんが居ると聞いたんだが」

「あ、はい。東京の美容短大に通っていました」

「そう。で今ここに通っているということは」

「はい。出来れば父の仕事を手伝いたくて」

「そうか。総一朗の娘さんなら大丈夫だよ。良く頑張っていると思う。後、三年間しっかり勉強して彼を超える設計図を書けるように私も力になるよ」

「ありがとうございます。はい。頑張って勉強します」

「あぁ。楽しみにしているよ」

「ご指導宜しくお願いします」

「総一朗が驚くような成果を出せるようにね」
笑顔で言ってくださった教授の眼差しは父のそれと同じように温かく私の心を包んだ。

 この大学にも私を応援してくれる人が居る事をとても心強く感じ、必ず教授の期待に応えられるようになろうと改めて決意した。

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