なぜ婚約者なのか説明書の提出を求む

四年間の真実

 玲於奈さんの懐かしいトワレの香りに包まれたまま……。

「茉帆。ごめん。会いに来るどころか電話もラインすら出来なくて……」

「…………」

「四年間も茉帆を放っておいて本当にごめんな」

「どうしてここに居るんですか?」
感情の籠もらない声で呟くように、やっと言った。

「茉帆に会いに来たんだ」

「今頃になって会いに来たって……」

 私がどんな気持ちで、この四年間を過ごして来たか玲於奈さんになんて分からない。

「茉帆。とにかく座って話そう」
玲於奈さんは私をソファーに座らせた。

「何から話せば良いのか……」
そう言って玲於奈さんは向かい合って座る私を見て戸惑っているように見えた。

「四年前の六月。僕は事故に遭ったんだ」

「事故?」

「ああ。仕事で車での移動中に……」

「えっ?」

「伊織の運転で信号待ちで停車していたんだ。そこに小さな子供が飛び出して来て……」

「ええっ?」

「スピードを出して走って来た車にはねられそうになって夢中で車から飛び出してた」

「…………」

「その子はかすり傷程度で済んだ。でも僕は肋骨と腕と脚を骨折して三日間、目も覚まさなかった」

「そんな……」
話を聴いているだけで怖くて体が震えた。

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