なぜ婚約者なのか説明書の提出を求む

初めての

「茉帆。このまま抱いても良いか?」

「えっ? だって……私、着物だし。朝からずっと着てるから……シャワー浴びたい」

「分かった。着物を脱ぐのも時間が掛かる?」

「畳まないとシワになるし……」

「じゃあ、僕が先にシャワー浴びるよ」

「あ、はい……」

 スーツの上着とネクタイを外してソファーの背凭れにさり気なく掛けて玲於奈さんはバスルームへ。

「どうしよう……」
とにかく着物を脱いで畳んで……。
荷物の中からパジャマ代わりのシャツワンピースを出して着た。

「ああ、サッパリした。茉帆も浴びておいで」
 真っ白なバスローブ姿の玲於奈さんはイケメンなのは分かっていたつもりだけど、色気ダダ漏れで目のやり場に困る。

「あ、はい……」
返事もぎこちないのが自分でも分かる……。

 バスルームの鏡に映る自分の顔を見る。
 本当にメイクは全て剥げ落ちて酷い事になってる。

「はぁ」
溜息をついた。

 玲於奈さんが居る部屋でシャワーを浴びるのなんて慣れてる筈なのに……。
 勝手が違い過ぎてドキドキする。

 念入りに体を洗ってシャンプーして剥げたメイクもキレイに落とした。

 ショートボブにした髪はドライヤーで直ぐに乾いた。
 お揃いの真っ白なバスローブ姿は慣れなくて恥ずかしい……。

 この後、もっと恥ずかしい時間を一緒に過ごすの?
 心臓が持つのかな?
 薬は今朝ちゃんと飲んだ。

 覚悟を決めてバスルームを出た。

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