なぜ婚約者なのか説明書の提出を求む
 カードキーは持ってるけど、チャイムを押す。

「はーい」
 母はドアを開けて満面の笑み。
「どうぞ」

「遅くにお邪魔して申し訳ありません」

「いいえ。こちらにお掛けになって」

 リビングに奥にはダイニング。その奥にも部屋? 
 エグゼクティブスイートか。

 父は反対側から出て来た。

「玲於奈君。どうぞ。それで話とは?」

「はい。実はきょう茉帆さんにお会いして一目惚れをしまして」

「まぁ。そうなの?」

「はい。それで折り入ってお話が」

「えぇ。何でしょう?」

「茉帆さんに美容師を辞めて頂いて私の秘書をして貰いたいと思います」

「まぁ。それは素敵なお話ね」

「僕の婚約者として入社して貰いたいと思っています」

「婚約者? あら、もうそこまで話が進んでいるの?」

「茉帆はそれで良いんだな?」

「あぁ。ええ……。はい」

「茉帆も玲於奈さんとの将来を考えるって事なのね?」

「あっ、はい」

「このお話を頂いた時に、そんな予感がしてたのよね。茉帆、いいのね?」

「はい」
もうこうなりゃ自棄だわよ。どうにでもなれって心境……。

「それで、今、茉帆さんは美容室のマンションに住んでおられるので、僕の方で部屋を用意します」

「まあ。そんな事まで?」

「はい。大切な婚約者ですから」

「玲於奈君にそこまでして貰うのは申し訳ないが……」

「いえ。私のマンションの空いた部屋に住んで貰おうと思いますので、ご両親にお許しを頂きたいと思います」

「玲於奈さんが居てくださるなら安心ですわ」

「茉帆さんを僕にお任せ頂けますか?」

「茉帆もそれで良いんだな?」

「あっ、はい」

「茉帆さえ良ければ、私達に異存はありません。玲於奈君、茉帆を宜しくお願いします」

「はい。僕が責任を持ってお預かりします」


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