なぜ婚約者なのか説明書の提出を求む
「あのぅ。私、ここに住むんですか?」

「そうだけど」

「えっ? それって同棲って事?」

「ちゃんと君の部屋も用意してある」
玲於奈さんに言われて付いて行く。
ドアを開けている玲於奈さんの後から、少し覗いて見た。

「はぁ? 何この広い部屋」

「君の荷物もここに置いてある」

 見ると広い部屋にちょこんと私の引っ越し荷物。

 というか家電は必要ないからと処分されたし、本当に服とか身の回りの物だけ……。

 壁一面のクローゼットと思しき扉を開けてくれる。

 そこにはスーツや靴、バッグ、部屋着や下着に至るまで、たくさん溢れてる。

「何ですか? これは……」

「全部、君の物だ。秘書として必要な物を揃えておいた」

「誰が?」

「実家の母親の女性秘書に選ばせた。センスは良い筈だし、サイズはピッタリの筈だ」

「その人は、独身?」

「何でそんな事が気になる?」

「もし玲於奈さんに特別な感情があったら……。私なんて邪魔者だろうから……」

「心配するな。兄貴の奥さんだよ」

「はっ? お兄さまは結婚していらっしゃるの?」

「あぁ。大恋愛の末にな。君の見合い写真も見てるから選びやすかったって言ってたよ」

「ごめんなさい」

「何で謝る?」

「私の存在を良く思わない女性が選んだ物なら嫌だなと思ったから……」

「それは、ヤキモチだと自惚れても良いのかな?」

「えっ? えっと……」

「そうだとしたら嬉しいけど」
玲於奈さんは優しい笑顔で私を見てる。


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