なぜ婚約者なのか説明書の提出を求む

珈琲タイムはリビングで

「コーヒーは飲めるか?」

「はい。好きですよ」

「じゃあ僕が入れるから」

「あっ、でもコーヒーメーカーですか?」

「そうだけど」

「私も入れられるように教えて下さい」

「良いけど。コーヒーはここにある。フィルターペーパーも。僕は少し濃い目だからこれくらいかな?」

「はい。分かりました」

「僕のカップはこれ。君のは、これにしようか?」

「はい。玲於奈さんがコーヌコピアで、私はプシュケですね。私、好きですよ。このカップ」

「詳しいのか?」

「いえ。私はそれ程でもないですけど、母が好きなので両方とも家にもありますよ」

「そうか。砂糖とミルクは?」

「砂糖は入れません。ミルクがあれば……」

 冷蔵庫を開けて
「フレッシュはここ。牛乳はここだ」

「はい。ありがとうございます」
私はフレッシュを二つ入れた。

「カフェオレが好きなのか?」

「はい。好きです」

 コーヒーカップを持ってリビングに移動する。

 コーナーカウチソファーとオットマンスツールがずらっと並んでいて、何処に座ろうかと悩む……。

 いったい何人で座るつもりよ?

 玲於奈さんはソファーの真ん中に腰掛けた。

「何をしている?」

「えっと。私は何処に座れば良いでしょうか?」

「僕の隣で良いけど?」
意地悪そうな顔で言う……。

「いいえ。こちらのオットマンで良いです」

「そんなに警戒しなくても、いきなり襲ったりしないよ」
笑って言うけど……。

「いきなりじゃなければ襲うつもりですか?」
全くもう……。男って奴は油断大敵だわ。

「僕は合意の上じゃなければ手は出さないよ」

「合意の意思は無いですからね」

「分かってるよ」
余裕の笑みがムカつくんですけど……。


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