なぜ婚約者なのか説明書の提出を求む

検査

 良く眠れないまま朝が来る……。

 まだ薄暗い時間から窓の外を見ていた。
 だんだん明るくなっていく空を眺めていた。

 どんな結果が出たとしても受け入れよう。
 例え、それが私にとって良くない結果だとしても。

 ドアをノックする音……。
 一人部屋だから
「はい」
と返事をする。

「おはようございます」
と背の高い綺麗な女性が入って来て優しく微笑みかける。

 えっ? どなただろう……?

「朝早くから、ごめんね。私、今枝 紗弓(いまえだ さゆみ)と言います。えっと、玲於奈くんの兄嫁の……」

「あぁ。はい。クローゼットの洋服を選んでくださった……」

「あれは気に入って貰えたかしら?」

「はい。とても素敵な物ばかりで驚いてました。本当にありがとうございました」

「とんでもない。玲於奈くんのリクエストに応えただけよ」
そう言ってクスッと笑った。
「きょうはね。必要な物を持って来たの」

「えっ?」

「昨夜、玲於奈くんから電話貰って、入院に何が必要か分からないから頼むって」

「そうなんですか……」

「こういう時、男の人って細かい所まで気が付かないからね」

「わざわざすみません」

「いいえ。ここは家の病院だから全然気にしなくて良いのよ」

 洗顔やジェル、歯ブラシセット、ヘアブラシ、ヘアクリップ、ティッシュ、タオル、ウェットティッシュ、と下着の上下の替えと薄手のカーディガン、スリッパまで……。

「検査するのには検査着だし、診察し易い寝間着は病院で決まった物を着て貰うから」

「はい。何から何までありがとうございます」


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