なぜ婚約者なのか説明書の提出を求む

退院

 玲於奈さんのタワーマンションに帰って来た。

「お腹空いたんじゃないのか? 昨夜から何も食べてないだろ?」

「ごめんなさい。せっかく買って来てくださったのに……」

「まあ、検査前だから食べられなくても無理はないよ」

「でも、良かった……。検査の結果が悪い物でなくて……」

「僕も安心したよ。僕の子供も産んで貰えそうだしな」

 そんな笑顔で言われても、どういう反応するのが正しいのか分からない……。

「はあ? えっと……」

「悠輔さんの話を聴いてなかったのか?」

「いえ……。聴いてましたけど……」

 あのう、私達は付き合ってる訳でも恋人でもないし……。

 子供って……。
 結婚すらしてないのに……。

 えっ? 結婚? はあ?

「どうした?」

「えっと、あのう……」

「婚約者っていうのは、いずれ結婚するって事だって分かってるか?」

「いや、それは知ってますけど……」

「茉帆が会社に慣れたら、正式に婚約しよう」

「はあ?」

「何か不満か?」

「あの、その、それは決定事項なんでしょうか?」

「勿論だよ」



 どうしよう。本当に逃げられないのかな?
 紗弓さんが言ってたし……。

 いや、まだ婚約した訳じゃないし……。
 最悪、婚約破棄という方法もあるし……。

 これだけは無理という何かを見付ければ良いのよ。

  
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