なぜ婚約者なのか説明書の提出を求む
 いや、いや、いや……。
 そんな事じゃなくて……。

「あの……」

「何?」

「こんなお高い物をいつ着けるんですか?」

「クローゼットのドレスを見なかったのか?」

「ドレス?」
 試着した日を思い出してみる……。

 こんなフォーマルなドレスいつ着るのよと思ったのよね……。

 あれは……。

 綺麗なブルーのドレスと桜色のドレスとシャンパンゴールドのドレス……。

「えっ? あのドレスに合わせて?」

「紗弓さんにドレスの色は頼んだけど、宝飾品は玲於奈くんが選んであげてって言われたからな」

「…………」

「どうした?」

「あの、でも……」

「僕が茉帆に着けて貰いたいから選んだ。拒否権は認めないよ」

 あなた様がセレブなのは重々承知致しておりますが……。



 そういえば母も宝石を買って
「あら。思ったよりお値打ちだったのね」
なんて笑ってたっけ。

 あの時は大きなブラウンダイヤの指輪だったな……。



「もう直ぐに必要になるから。きょうは雨で丁度良かったのかもしれないな」

「は?」
仰っしゃる意味が分からないんですけど……。

「嫌でも分かる時がもうすぐだって事だよ」

「…………」

「そうだ。この後エステにでも行くか?」

「エステ?」

「まあ、茉帆には必要ないか。何もしなくても充分綺麗だし」

 ますます意味不明なんですけど……。


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