なぜ婚約者なのか説明書の提出を求む
名古屋に泊まる

実家に

 その夜は玲於奈さんと二人で、私の実家に泊まる事にした。
 部屋はいくらでもある。

 玲於奈さんに最初にお風呂に入って貰った。
「良いお湯でした。檜の湯船が落ち着きますね」
母の縫った浴衣姿が良く似合う。

「それは良かった」
父は笑顔で言った。自慢の檜風呂だから。

「あなたも、きょうは疲れたでしょう? お風呂に入ってお休みになったら?」

「そうだな。そうさせて貰うよ。玲於奈さんにワインでもお出しして」

「そうね。美味しいチーズがあったから持って来るわね」

「あ、いえ。お構いなく」

「何も大した事じゃないわよ」
母は笑顔で言った。

「浴衣もたまには良いもんだな」

「そう? 母は和裁をしてたから、毎年のように浴衣は縫ってくれるの」

「茉帆も湯上がりは浴衣なのか?」

「きょうは着るつもり。今年は玲於奈さんと私にって縫ってくれたらしいの」

「はい。冷えた軽めの白ワインとチーズと後は有り合わせで悪いけど」

「いえ。とんでもない。ありがとうございます。浴衣もありがとうございます」

「良かったら持って行ってね。荷物になるならここにまた泊まる時の為に置いておくけど」

「とても気に入ったので頂いて帰ります」

「そう言って貰えると嬉しいわ」

「こちらこそ態々縫ってくださってありがとうございます」

「いいえ。玲於奈さんのお布団は茉帆の隣の部屋に敷いて来るからね」

「すみません。ありがとうございます」

「茉帆もお父さんの後に入る?」

「私は後で良い。お母さん先に入って」

「じゃあそうさせて貰うわね」

「お母さんも疲れたでしょう?」

「そうね。じゃあ、おやすみなさい」

「おやすみなさい」


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