地味同盟~かぐや姫はイケメン達から逃れたい~

 そして視線は痛いけれど何事もなく午前中の授業が終わりお昼休み。

 あたしは今朝と同じようなため息をついていた。


 しのぶは前の席だけれど、昨日言った通りあまり関わらない様にしてくれた。

 朝に「おはよう」と当たり障りのない挨拶をしたっきり会話らしい会話はしていない。

 寂しいけれど、今は我慢だ。


 と言っても、しのぶはやっぱり心配なのか何度も視線を寄越してきていた。

 その目は《大丈夫?》《ねえ大丈夫なの?》《本当に大丈夫?》と常に聞いて来ている様。

 いや、大丈夫だから落ち着いてって何度言いかけた事か……。


 今も《食堂一緒に行かなくて大丈夫?》とばかりに心配そうな眼差しを向けてきていたから、渡辺さんにアイコンタクトを送って連れだして貰ったところだ。

 そうしてしのぶを何とか先に行かせることが出来たので、今度はこっちのミッションだ。



 隣の席で背を丸めて寝入っている久保くん。

 移動教室の時は起きて移動するけれど、移動した先の教室ではやっぱり寝ている。

 彼の中には起きて授業を受けるという“普通”が存在しないんだろう。


 そんな彼と仲良くくっつきながら食堂へ向かうというのが今あたしに課せられたミッションだ。
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