地味同盟~かぐや姫はイケメン達から逃れたい~
「……」

 言うだけ言って去って行った彼女に、モヤモヤする。

 反論したいことも沢山あったのに、言い逃げされた気分だ。


「なんだあれ? 腹立つー」

 でも明人くんもそう言って怒ってくれて、少し気が楽になった。

「あの様子じゃまた何かしてきそうだよな。美来、気をつけろよ?」

 心配してくれる勇人くんに「うん」と答えて、あたしたちはやっと体育館倉庫から出る。


 香梨奈さんのことも気がかりだけど、久保くんも大丈夫かな?

 あたしに惚れてる、なんて……あんな状態で聞かれたくなかったよね?

 でも……嬉しかった、な……。


 明人くんからの告白は困るなぁって思ったのに、久保くんの気持ちを聞いて嬉しいと思うなんて……。

 やっぱりあたし、久保くんのこと――。


「美来?」

 考えながら歩いて、答えを出そうとしたとき、心配そうな勇人くんに名前を呼ばれた。

「ん? 何?」

「本当に大丈夫か? あの女のことなんか気にすんなよ?」

 励まそうとしてくれる彼に笑顔を向ける。


 ……やっぱり、友達として好きなんだよね。勇人くんのことは。

 好きだって言ってくれることは光栄に思う。

 でも、大事な友達だからこそあたしに関わることで嫌な思いをして欲しくない。

 これまでの経験から、友達だと――大事だと思うからこそ、好きになられると困る。

 その結果はいつも嫌な思い出にしかなっていないから……。
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