誘惑の延長線上、君を囲う。
誘惑の延長線上、君を囲う。
日下部君とは土日祝の休みの日も一日中一緒に居て、クリスマスも年末年始も一緒に過ごした。クリスマスにおいては高級ホテルのクリスマスディナーを予約してくれて、夜景の見える広い部屋にお泊まりした。年末年始は一緒に年越しそばを作って食べて、一緒のベッドで朝を迎えてから初詣に行った。

あんなにも悩んでいたのに気持ちを伝えた途端、歯車は動き出した。もっと早く、私から行動していたら……伊能さんも傷付けずに済んだのに。臆病な私は自己保身しか考えていなかった為、あんなに良い人を傷付けてしまった。

しかも、私の為に高額なお金も使わせてしまった。あの水色の小さな紙袋は女性の憧れのブランドだから、高かっただろうなぁ。私は受け取る事は出来ないけれど、使い回しみたいになってしまって元カノさんにもプレゼント出来ないだろうし……重ね重ね、私は失礼な事をした。後ろめたさを感じつつも、私は日下部君との日々を満喫していて、つくづく自分は嫌な女だなぁ……と思っている。

せめてもの罪滅ぼしに神様に伊能さんの恋路が上手く行きますように、と願うばかりだ。

さて、年明け二日目の今日はというと……、昨年の12月初めにお誘いがあった同窓会に二人で参加している。久しぶりに担任の先生や同級生達と会えて喜ばしい。

「琴葉と日下部君が一緒に来たって事は、まさか……!二人はできてる?」
「えー、こないだ会った時に琴葉は日下部君と連絡とってないって言って無かった?いきなりの急展開じゃん?」

担任の先生の挨拶と乾杯の挨拶が終わった後、同窓会の会場の居酒屋に二人で一緒に来た私達は同級生達の格好の餌食となっている。次々に質問攻めにされる私達。
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