誘惑の延長線上、君を囲う。
「義理の弟って奴が、また憎めない奴でさ。俺に母親の会社を継いでくれ、とか、これからは仲良くしようとか言って来る訳!マジでふざけんなって思うんだけど……、頼ってくるから可愛いとも思うけどな、やっぱり、アイツ、許せないわー」

支離滅裂な上、状況が上手く飲み込めないから、どっちが本当の気持ちなのか理解出来ない。

「……それで、日下部君は一人飲みしてたの?」

「そうそう、そうなんだよ!今度、アイツらは結婚するんだってさ」

「そうなんだ……」

義理の弟ならば、祝福するべきか、否か。分からずに言葉が詰まる。つまり、日下部君は失恋のヤケ酒ってところなんだろうな?

「女々しいし、馬鹿みたいな話だけど、ずっと傍で見守って来たんだ。妹みたいな存在だったけど、俺には可愛くて可愛くて仕方なかった……」

"妹みたいな存在"か……。強がってばかりいて、素直じゃない私には程遠い存在なのかもしれない。

小さい頃から女の子よりも男の子と遊ぶ方が多く、気分的にも楽だった。遊び方の内容もお人形遊びよりも、鬼ごっこやサッカーとかの身体を動かす遊びの方が好きだった。

男勝りで生きてきた私だったけれど、成人式の前撮りは可愛く映りたいとか、式典に参加した際には可愛く見られたいとか、欲が出てきて短い髪を伸ばす決心をする。その事がきっかけになり、ショートボブを伸ばし始め、今でもふわふわウェーブを継続している。

成人式には編み込みをしてアップをした髪型で参加したが、今日は下ろしている。ショートボブではない私を日下部君が見るのは二回目だと思うのだが、酔っているせいか、何も言われない。

化粧も程よくして、髪型も変わって、女らしくなったと自画自賛しているのだけれども日下部君には興味がないのかも?

酔っているとはいえ、何だか虚しい。
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