誘惑の延長線上、君を囲う。
私は食前酒に最適なキール・ロワイヤルをオーダーした。シャンパンベースが美味しい。目の前に広がる綺麗な夜景に魅力されながら、日下部君との時間を堪能する。周りから見たら私達は完全に恋人同士だよね?

「……日下部君はさ、元カノとのデートってどこに行ってた?」

「んー?俺、思い出深い元カノとか居ないけど……。大学時代に付き合ったって言っても、年上とかだから相手からしても暇つぶし程度だったのかもな」

食事を楽しみながら三杯目のカクテルの酔いに委ねて勇気を出して聞いてみたいのは良かったのだが……意外な返事だった。私にはこんなにも尽くしてくれているのに、思い出深い元カノが居ないってどういう事?

「暇つぶし?」

「うん、多分、そう。彼氏と喧嘩した時とかの埋め合わせみたいな関係。俺も本気になれる人は見つからなかったからな……」

「そっか……」

それなら、私も暇つぶしなんじゃない?詳しくは聞かないけれど、日下部君の歴代の彼女達とは身体の関係もあったように聞こえるし。私はグラスを手に持ちながら俯いた。

「佐藤はね……、初めての”特別枠”ね」
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