誘惑の延長線上、君を囲う。
同居人は鬼上司
「……で?売上が伸び悩んでいる原因は?」

「原因?」

「1号店は2号店の二倍近く売り上げている。それに比べて2号店はどの店舗よりも売上が悪い。立地が好条件にありながら、伸び悩んでいる理由は何だ?」

8月、店舗での研修期間を終えて正式にエリアマネージャーに昇格した。各店舗を巡り、本社にて上司の日下部君にそれぞれの状況を説明している。

「バイトのおしゃべり?お客様が居ても居なくても、接客以外は話をして過ごしていました。……それに1号店と2号店は家財がありますし、雑貨だけと異なり、あそこのバイトの女の子は向いてないのかもしれません……。応対が適当だな、とは思いました」

「向いていないと思うなら他店に移るってもらうか、そもそも話をしているのを注意したりするのも佐藤の役目だろ?このままだと2号店は撤退する事も視野に入れないと行けなくなる。データのまとめばっかりしてないで、暇があれば2号店に足を運んで活を入れて来い。俺の手の回らない事に対して、先に手を回してもらわないと困る。何の為のエリアマネージャーだ?」

「はい、申し訳ありません……」

偉そうに椅子にふんぞり返りながら座り、コーヒーを飲みながら受け答えをしている。二人きりの時とは違い甘い雰囲気などなく、ネチネチうるさいし、鬼上司だ。
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