ストーリー
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 中学校に上がった希子はあまり勉強が得意ではなかった。
 クラスメイトのもう少しで九十点だったのに、なんていう会話には全く入っていけなくなっていた。

 どうやって学校の授業を覚えればいいのかよく解っていなかったのだ。

 特に暗記が必要となる社会科の授業や、スペルを覚えなければいけなかった英語の授業が苦手で、毎回なんとかギリギリ赤点を回避するようなレベルだった。

 それとは真逆で、国語に関しては漢字の書き取りを除いてほぼ満点だった。

 自宅では小学生の読み物からも卒業して父親の勧めで小説を読み始めるようになっていた。

 本屋に行った際にティーンエイジャー向けの小説が並んでいる棚があり、それを父親が見つけてくれた。

 文庫本というものに初めて触れた際には何だか大人になった気がした希子。
 敷き詰められた活字を読むのがこんなにも楽しいものだとは思っていなかった。

 希子にとって小説や大人の読む本というのは、『吾輩は猫である』といった様な小難しい文面のものばかりだと思っていたからだ。

 中学生が学校や街中の怪奇現象の正体を解き明かすようなミステリーや、裏取引をしている現場にいたイケメン男性と居合わせてしまった高校生のはちゃめちゃな日常など、様々なものを読んだ。

 それと同時に弟の満が好んで読んでいた漫画も読み始めるようになった。
 少年漫画には興味がない、時代は恋愛小説だ。そう思っていた希子だったが読み始めると止まらなくなる。

 ロールプレイングゲームにも出会い、たくさんの物語と沢山の興奮を味わった。

 中学生にもなって、この世界には人ならざる者が存在するのではないか、自室に何の前触れもなく妖精が現れるのではないか、なんてことを思うほどに影響を受けていた。
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