ストーリー

 そんな雑談をしながらふと受付の横を見ると塗り絵が数枚設置されていて、『モモちゃんが何を見つけたか教えてね』と書いてある。

 銀行のキャラクターであるモモちゃんが笑顔でポーズを取っているそのイラストの左側にフリースペースがあり、塗り絵をしながらモモちゃんの見つけたものを書いてほしい、というキャンペーンのようなものらしかった。

 それを見て一枚の絵本のようだなと希子は思う。

「私、高校卒業してすぐ結婚したからもう子供がいるんだけどね、こどもにモモちゃんが見つけたのは何?って聞いてみたんだけど、びっくりしちゃった、何だと思う?」

「びっくりって言うことは予想しなかったことなんでしょ?なんだろう、肉まんとか?わかんないや」

 希子の答えに笑いながらも肉まんならまだいいよと言うえり子。

「ハエだよハエ。ぶーんって飛んでるハエ」

 それは凄い、そう言って笑い、届いた塗り絵はどんなイラストが多かったの?と続けて聞いてみる。

「そうね、ネコとかケーキ、車とか子供らしいなって思う物が多かったよ。でも、子供らしいってなんだろうね」

 そんな台詞を聞いて、ハエと答えたえり子の子供は高校時代先陣を切ってクラスを仕切っていたえり子の子供だなぁと思う。

 反対意見を恐れずに思ったことを行動に移すと言うのは、大人になってからは特に難しいことだ。えり子の子供は思ったこと言ってみる、やってみるが出来る子供なのだろう。

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