嫁ぎ先は水神様~ただ身を投げただけなのに~
第1話 生贄
私の住む村は、山の中にあって、普段は稲作が盛んな豊かな土地だった。

村の人々は、これも山の真ん中にある、大きな池に住んでいる水神様のおかげだと、言っていた。


「日照りは、もう10日も続いている。」

「これ以上日照りが続くと、水が持つか。」


けれど今年の夏は、日照りが続き、稲の成長が危ぶまれた。

まだ10日、いや10日もだと村人は毎日、私の家に集まっては、お父さんと話合いをしていた。

私の家は、豪族だと言われていて、村のまとめ役をしていた。


「殿様、これ以上水が減ったら、水神様の池から、水を貰うべきなんじゃないか?」

「いや、ダメだ。水神様のお住まいを犯してはならない。」

「水神様の前に、俺達が食っていけるか分からない。」


水をどうするか、皆、戸惑っていた。

水神様の池は、湧水があって、こんな日照りでも水位が下がる事はなかった。

でも、”水神信仰”の強いこの村では、水神様の池の水を使う事を、恐れる人もいるのだ。


「皆で、水神様にお祈りに行こう。」

「そうだ、そうだ。」

そして村の人々は、水神様の池に、お祈りをする事に決めた。
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