嫁ぎ先は水神様~ただ身を投げただけなのに~
「生贄で湖に入って、助かるまでの間って、生きた心地しなかったよな。」

「う、うん。」

本当は、気づいたらあの屋敷の中にいて、苦しんだ覚えはないんだけど。

「それで助かって。生贄だったのに、もう村に帰れないって思ったんだろう?つきの事だから。」

「はやて……」

「だとしたら、世話になった人に心が動いても、仕方がない。」

私は、はやての肩に、頭を寄せた。

はやてと心が通じている時は、いつもこうしていた。

こうすると、安心するんだよね。


「そいつとは、会えているのか?」

「全然。」

「どうして村に帰って来た?そいつが帰れって言ったのか?」

「ううん。私から、村に帰りたいって言った。」

「どうして。」

「その人と一緒にいても、意味がないから。」


るか様には、ほのさんがいる。

私がいなくても、るか様は生きていける。


「つきらしくないな。そんな寂しそうな顔をするなんて。」

私は、はやてを見た。
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