囚われて、逃げられない
次の日の朝。
心地よい感覚がして、野々花が目を覚ますと泰氏が頭を撫でながら見つめていた。
「フフ…おはよ、野々」
「泰氏くん…おはよう」
「幸せ~朝起きて、野々が腕の中にいるなんて……」
「うん…」
泰氏の胸に顔を埋める、野々花。

「これから毎日、こんな幸せが続くんだね~」
「うん…」
「あーずっと…こうしてたい……」
「そうだね…
でも、起きて用意しないと……」
「うん」

起きて朝食を一緒に作り食べる。
「そうだ!野々、約束してほしいことがあるんだ」
「ん?」
「昨日も言ったように、俺は離れたくないから、会社でも俺の目の届くとこにいてね!」
「うん。でも…資料取りに行ったりとか……」
「大丈夫。そんなことさせないから!
野々が俺から離れるようなこと、俺がさせない!
……その為に、課長になったんだから………」

「え?」
「ん?ううん。早く食べて行こ?」
「うん」

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
それから数日は、目まぐるしかった。
泰氏の知り合いが、野々花の引っ越しの荷物を全て運んでくれ、荷解きも全ておこなってくれた。
アパートの引き払いや、いらない家具等の処分も、他の手続きなども全ておこなってくれ、野々花はそれをただ他人事のように見ていた。

「ありがとうございました。
何から何まで……」
「いえ…では、私達はこれで……」

「野々」
「ん?」
「ギュッてしよ?」
「うん…」

「これで、完全に俺のモノだね!」
「うん…」
「野々、大好きだよ!」
「私も、大好き!」
二人は抱き締め合ったのだった。
< 16 / 44 >

この作品をシェア

pagetop