囚われて、逃げられない
「そんな……そうだとしても、私が好きなのは泰氏くんだし……」
「うん、わかってるよ?
でも、不安なの!」
「どうしたら、不安がなくなるかな?」
泰氏の言葉に、少し泰氏を見下ろし頭を撫でる野々花。

「野々が“絶対”俺の視界から消えなければ、俺を愛し続けてくれてれば大丈夫だよ!」
「わかった、これからも泰氏くんの傍にいる」
「うん…」

ベットに横になり、やっぱり泰氏は野々花をひたすら見つめている。
「泰氏くん」
「ん?」
「今日は私が泰氏くんが寝るまで、頭撫でてるから寝ていいよ?」
ゆっくり泰氏の頭を撫でる。
いつも寝る時は、必ず泰氏が野々花の頭を撫でる。
その心地よい感触に包まれながら、野々花は眠りにつくのだ。

「フフ…ありがとう!じゃあ、おやすみ!」
「おやすみなさい…」
「………」
「………」
「……え…?野々、寝たし……」
目を瞑り、野々花の手の感触にうっとりしていると、途端に感触がなくなった。
目を開けると、野々花は眠っていた。

「………野々…好きだよ」
「大好き…」
「どうしたら、不安がなくなる?」
「そんなの決まってるよ」
「周りの人間がいなくなればいいんだよ」
「例えば……」
「アイツ(東生)とか」
眠っている野々花に言葉を並べる泰氏。

「野々の周りに、俺しかいなくなればいいんだよ」


「…………やっぱ、消すか!」
泰氏は起き上がり、スマホを取った。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
「失礼いたします」
「ん」
「ボスが来れないので、代わりに私が……」
数分後、育美が泰氏のマンションに来た。

「磯島 東生を消したいんだけど、ただ消すだけじゃ野々から奪えないと思うんだ。
なんかいい方法ない?」
< 30 / 44 >

この作品をシェア

pagetop