囚われて、逃げられない
「え?そんな酷い…私、そんなことしない!
正直、企画の詳しい内容もしらないし…」
「野々はあり得ないよ」
「は?光永、恋人だからって庇うの?」
「そうじゃないよ!だって、俺…野々と付き合い初めてから、片時も野々から目を反らしたことないから。
一緒に住んでるし、ここでもずっと目の届くとこで、仕事させてるんだよ!
もし野々が、流出するようなことがあったとしたら、すぐにわかるよ」

「一緒に住んでんの?お前等」
「そうだよ。てか、今はそんなこと関係ないよね?
で、どうなの?お前は」
「は?」
「流出の件だよ!」
「そんなことするわけないだろ?
そんな会社に不利なこと、俺がしてどうすんの?」
「会社に不利なことしないだろうけど、俺を陥れることはしそうだよね?お前は」

「なっ…!」
そして泰氏は東生の耳元に顔を寄せた。
「だってお前…野々に、惚れてるよね?」
「お前……」
泰氏の耳打ちに、明らかな動揺を見せた。
「悔しいんでしょ?
ここに就職させてまで狙ってた野々を、高校の同級生だったとはいえ突然現れた俺に取られて」
「うるせーよ」
ドン━━━━━!!!
突然東生が泰氏を突き飛ばし、泰氏が床に倒れた。

「泰氏くん!!?」
「……った…大丈…夫だよ…」
「東生くん!酷い!
どうして、急に突き飛ばすの?
………泰氏くん、怪我は?」
「うん…ちょっと、手首…」
「え?手首?」
泰氏が右手首をさする。

「捻った?どうしよう…と、とにかく、手当てしないと!私、湿布買ってくる!」
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