囚われて、逃げられない
「え?
た、泰氏くん…」
「えー呼びすてで構わないよ?」
「くん付けが限界……」
「わかった!
じゃあ…それで構わないから、呼んで?」
「うん…////」

「野々って、可愛いね~」
「可愛くないでございますよ////」
「フフ…変な日本語(笑)!!」
「あ…だよね(笑)
フフ…」
気づくと、泰氏に頬を触られていた。

「え━━━?
あの…泰氏、くん…?」
「ごめんね、なんか…無意識に、手が……」
「え?」
「どうしよう……
このまま……連れ去りたい…!!」
頬を撫でながら、うっとりとして泰氏が言ってくる。

「連れ…去る?」
「うん、好きだよ…野々」
「泰氏くん…」
「野々の気持ち、聞かせて?」
そんなの決まっている。
野々花だって、ずっと憧れていた。
だから陰ではあったが、必死に泰氏を気にかけ、できることを手助けしてきた。

「私も━━━」
「失礼いたします」
「あ…」
そこにウェイターが、デザートを持ってくる。

「タイミング悪っ…!!」
「え?」
「君、邪魔するなら辞めさせるよ?」
「は?」
「俺、ここのオーナーの知り合いだよ?」
「え……!?」
「証拠、見せようか?」
すると泰氏は、スマホを取り出し電話をかけた。

「もしもし?
━━━━うん、そうだよ。何かあったから電話したんだよ。早く来てよ!」
一方的に話し、通話を切った泰氏。
「野々」
「はい!」
「フフ…いい返事(笑)」
個室の雰囲気が張り詰めていたので、思わず肩に力が入る野々花。

「ちょっと、待っててくれる?
俺はここのオーナーと話をするから、デザートでも食べながら待ってて!」
「うん…私は泰氏くんといれるなら、何分でも、何時間でも大丈夫」
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